デロス2
デロス2
デロス島のつづき
ディオニュソスの神殿跡では、人類史上最高品質大理石製巨大ファロスが海に向かって雄叫びをあげていた。台座の上にチン座ましましているデロスのファロスってか。ライオンの回廊と呼ばれる場所では、ライオンとは思えない不思議な形をした四つ足動物像が何体も並んでいて、これも海に吠えている。世界の中心でみんな愛を叫んでいるじゃないか。
それらを含め、いろんな形をした大理石像や、具象的なモザイク絵画も残っているが、デロスのすばらしさは1に地形、2に地形。3~100まで全部地形。島全体が小高い丘になっていて、どこからでもすばらしい角度と距離感でエーゲ海とその島々を望むことができる。たとえ海が荒れていたとしても。
人は昔から、絶景ポイントを探してうろうろ移動した。世界遺産だの、名所旧跡だのと呼ばれるところは、WOWな絶景と決まっている。何が絶景になるかは時代とともに変わるわけではない。2500年前の地中海で選ばれた場所が、今でもボクらを激しく感動させる場所の力を維持している。四半世紀前の旅の記憶も、その100倍の過去の記憶も、その場の自然と交感することで現在に甦る。遺跡や廃墟を訪ねる醍醐味はそこにあるのだろう。
観光旅行はお手軽に絶景をお膳立てしてくれる。ボクらはいつも薄汚れたこの場から逃げ出して絶景を探す旅に出ようとしている。どんどん景色を破壊して、自分の周りには見るべきものが無くなったのだろうか。
2010年4月6日火曜日