銭湯
銭湯
夕方になると決まって黒煙を吐き出す煙突が気になっていた。サウナと露天風呂もあるらしい。行ってみる。
通常は450円だが、サウナも入ることにして800円。番台というより、フロントと言った方がいいカウンターで、タオル大小を貸し出してくれる。日曜の黄昏時、男湯には20~30人ぐらい。女湯からは壁越しににぎやかな話し声が聞こえるのだけど、こちらは沈黙の修行僧軍団の様相だ。桶が黄色いケロリンじゃなくて木製。湯船につかると視線はペンキ絵が眺められない向きになってしまうのは何処の銭湯でも同じなのだろうか。サウナは100度。サウナの後、露天風呂に出る。見上げると紺碧の空に上弦の月と黒煙の煙突。
生まれて最初期の記憶の一つに、旅先で親に連れられていった銭湯で大泣きしている自分の姿がある。親は泣き止まぬバカ息子に懲りたのだろう、以後一緒に銭湯に行くことはなかった。あれから数十年、今日まで湯煙の彼方に霞む幻影だった銭湯が、これからは歩いて行ける場所になった。
湯上がりにはガラスビンの牛乳。中村孝志さんに敬意を表し、腰に手を当てバロックトランペットスタイルでグビッ!
2010年1月25日月曜日