鈍色舎

 


「にびいろしゃ」と読む。鈍色は濃い灰色。平安時代はこの色の一般的な呼び方だったらしいが、灰色や鼠色そしてグレーに取って代わられ、この読み方が分かる人は少数派になっている。


伝統工芸の良さを見直し、「用」の必然に導かれた「美」を提案し続けようとして、あのコンドーさんが起業した会社の名前だ。


物欲とバブル経済の果てに登場したスローガン「美しい国、日本」の対極を目指すコンドーさんの、滅び行く美のイデアに対する執念が、起業に向かわせた。美は個々の商品に宿るのではなく、美そのものとして立ち上がる。美は感覚的に認知出来る形態を持たない。そう教えてくれるプラトン先生に敬意を表して、正多面体の中でも最も単純な正四面体を手掛りに、「鈍色舎」のロゴデザインをさせていただいた。


鈍色は死を想起させる色である。我々は、美の終末からの出発を余儀なくされている。

 

2009年9月18日金曜日

 
 

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