ソウル食日記
ソウル食日記
A/Mと共にソウル経由で帰国の途。ソウルで過ごしている家族と久し振りに会う。妻が髪を短く切っている。
18日夜。牛退治。いつもの又来屋。ユッケ、センカルビ、ヤンニョムカルビ、冷麺まで怒濤の勢いで食べる。思えばエジプトでは貧しい食生活だった。妻は味が値段に見合わない、などといっぱしの料理評論家的辛口批評をしているが、エジプト人にしてみれば文句の付けようが無い美味しさである。
19日。朝は健康に気を使っている義母が用意してくれるサラダと果物。建築家みたいに、ZahaのDDPと宗廟を廻った。よく歩いたので、足のマッサージに行く。「休息」という黒地に白抜き漢字の看板が目につく店。足裏だけの簡単なやつではなく、ベッドに寝た姿勢で太ももから下全般を攻められる40分コース25000wを勧められて選んだ。くすぐったがり屋なのでそもそもマッサージはあまり得意ではないのだが、くすぐったいどころではなく、何やら秘密の道具を使って足裏を擦ったりして大変に痛い。うっ、とか、あっとか言うと少し力を弱めてくれるが、そのうちまたゴリゴリ攻めて来る。不思議なことにそのうちその痛みにも慣れてきた。ふと気づいたら鼾をかきながらぐーすか寝ていたらしい。私も随分大物になったものである。もう、どこからでもかかってきなさい。
夜の明洞は安っぽいガラクタを売る店が犇めいていて、安っぽい外人観光客が溢れている。最近韓国では鳥の唐揚げ店がブームだと聞いた。安っぽい街を散策するとブロックを占めるビル一軒丸ごと鳥カラ店になっているような暑苦しいエリアに出くわした。当然鳥退治である。鳥を喰い(チキン)、ビールを飲む(メッチュ)ことを「チーメッ」と言うらしい。そのチーメッを2件ハシゴし鳥退治完了。思えば昼も参鶏湯(土俗村)だった。
20日。朝食はいつものサラダと果物。美味しい冷麺を食べるのがソウル滞在の目的の一つだったので、冷麺大魔王LGMに以前教えてもらった店に、ランチタイムで混む前、1130頃に入る。ミシュランの看板が掲げてある。昼からビールとマッコリを飲み、豚肉をつまみながら、透き通ったスープに浸かる待望の冷麺を啜る。んまい。気づくと、妻が隣のテーブルの人を見て、突然何やら話しかけている。あれ、この人知ってるぞ。妻の留学仲間で、今はソウルで大学教授をしているキムさん。我々の結婚式にも出てくれたあのキムオッパが、隣の席でビビン麺と餃子を食べている。何と言う偶然。30年振りの再会だ。興奮して記念撮影と連絡先の交換。びっくりした。ここでAとMは帰国。
夜はずっと食べたかったドジョウスープ。日本のドジョウの食べ方とは違い、ドジョウを丸ごとすり潰し、野菜と煮込んで山椒で仕上げる。白米をスープに投入し、スッカラで掬って食べる。滋味が広がる。久し振りに酒を飲まない夕食だった。明け方雨が降る。ソウルでも久し振りの恵みの雨。少し気温が下がる。
21日の昼は大学路のベトナム料理屋で牛肉のフォーとライスペーパーで巻いて食べるバインセオ。ベトナム料理が流行っているようだ。夜は牛の内臓専門店でミノとコプチャンを攻める。舌にまとわりつくような濃厚な食感と果物のような香り、記憶に残る味である。内臓はホルモン(放るもの)といわれ、日本の一部では蔑まれ疎まれバカにされていたが、この味を知ってしまうと、放るもんを捨てていた輩は自らの無知を恥じるしか無いだろう。味の世界は広大無辺。
22日の昼は、今回のソウル滞在最後の食事。日本で云うと居酒屋のようなところでいろいろ楽しむ。肉も魚も野菜も何を食べてもいい。そして全ての皿がマッコリに合う。家族経営の小さな店だが、乞われて新しい店を出す計画があるようだ。先代の社長がご挨拶に出て来て、店自慢をひとしきり。若い2代目社長と記念撮影してお別れ。
よく食べた。ほどほどに飲んだ。
2018年8月17日金曜日