井の頭文学施設に関する整備基本プラン(修正案)
井の頭文学施設に関する整備基本プラン(修正案)
夜のうちに降った雨があがり、空気が澄んで気持ちがいい。鳥の鳴き声を聞きながらの散歩に出かける。
いつものコースで濡れた未舗装道を玉川上水に沿って歩くと靴底が泥だらけになりそうなので今日はまず西園に出る別ルート。と、西園に入ったところに小さな立て看板がある。少し前に地盤調査をしていた場所だ。嫌な予感がする。近づいてみると、
「井の頭文学施設(仮称)に関する整備基本プラン(修正案)に関するパブリックコメントを実施しています。」
とある。なにやら太宰治の文学館新築と吉村昭の旧邸移築をこの場所に計画しているらしい。(修正案)とあるのは以前「スポーツ施設管理センター」の近くで計画していたものがパブリックコメントにより反対され、敷地の変更を余儀なくされた経緯があるようだ。
以下の意見書を三鷹市に寄せた。
上記案に反対。反対の論拠は、概ね次の3点に集約される。
1: 計画の必然性への疑義
▶この計画案は『井の頭恩賜公園マネジメントプラン』(東京都建設局 平成27年5月)の「多目的広場ゾーン」の管理や整備等にかかわる取組み方針「草地広場のひろがりを維持し、多様なレクリエーション利用に対応していく。(55-9)」に反する▶既存の方針に違反してまで、個人の記念施設を公共性の高い都市公園内のこの場所につくる必然性はあるのか▶その個人は三鷹に住んでいたが、出生地の津軽には太宰ミュージアム「斜陽館」、荒川区には吉村昭記念文学館、が既に存在する▶言わずもがなだが、そのうちのひとりは玉川上水で自死し明星学園前で溺死体が引き上げられた迷惑な輩である。
2: 環境保護の観点
▶この広場は「小鳥の森」という手つかずの森に隣接し、建設による野鳥の生態への影響は未知数である。井の頭公園の緑を削ってまで建てる説得力のある理由はあるのか▶「整備基本プラン」には「既存樹木をできるだけ保存するなど、樹林をはじめとした公園の環境に最大限配慮した施設規模」という行政側に都合の良い解釈自由な書き方がなされており、地下水脈への影響、自動車の進入や空調室外機による環境負荷、景観破壊など、自然環境全般に対する負荷増大への不安は払拭不能である。
3: 計画の進め方の不備
▶「整備基本プラン」に公開されている情報には、「基本」といいながら、予算、運営費など基本的な事業計画がない。公的な場に建設し税金で運営することになる施設が、事業計画を公表しないで計画を進めるのは市民に対する背任である▶配置計画が不透明である。少なくとも2棟の計画が公表されているが、公園内にどう配置するか現時点では不明である▶建築計画のみが一部公表されているが、道路計画は不明である。公園内への自動車の進入は言語道断の有り得ないことだが、日常的に車が寄り付けそうもない場所に計画し、ハンディキャップ対応はどう考慮しているのか▶単線での単純な平面図が公開されているのみで、景観に対して影響が大きいと思われる立面図が不明である▶誰がどのような与件を基にして現在発表されている平面図(案)をつくったのか。配置計画、立面計画、断面計画、設備計画等、評価されるべき情報が圧倒的に不足している▶設計者選定のプロセスが不透明である。今後設計者は匿名で指名するのか。賛成・反対が拮抗し、これほど周囲が注視する公的な計画は、立案時よりコンペ等で設計案を募り、その上で計画そのものの可否を議論すべきであろう。
行政の文化度は情報公開の透明度と比例する。丁寧かつ真摯なご対応を望む。
2018年1月4日木曜日