Jordi SAVALL
Jordi SAVALL
The Celtic Viol 〜Savall Trio〜 @ 三鷹
やっと念願かなって生・サヴァール。
高いのと低いのと2種のヴィオールを弾くジョルディ・サヴァール、アイリッシュハープ&プサルテリのアンドルー・ローレンス=キング、パウロンというタンバリンみたいな打楽器を操るフランク・マグワイアー。その3人でアイルランド、イングランド、スコットランド、アメリカの伝統音楽を組み合わせた「セット」と呼ばれる複数曲を繋ぎ合わせたメドレーを演奏。
冒頭、満席の600人が固唾を飲んでその手元を見守っていたサヴァールのトレブル・ヴィオール、最初の1音でノックアウトされる。倍音って、こういう事だったのね。その場にある全てのものが鳴り響いている。脇に置くバス・ヴィオールが静かに共鳴しているかもしれないのは当然としても、アイリッシュハープの弦、パウロンに張ってある皮、ステージの床、取り巻く壁、天井、そして聴衆一人一人全員があらゆる倍音に共鳴して歌っているようだ。サヴァールが素知らぬ顔で、脱力した右手に持った弓を動かしている。その小さな動きで建築が大きく揺さぶられている。
かそけき音を出すヴィオール属の楽器は、バロック時代に至り、オペラや大音量が要求された大きなコンサートホールが好まれるようになるにつれ、大きな音が出るヴァイオリン属に取って代わられ絶滅したかに見えた。150年以上ほとんどかえりみられなかったその楽器を、サヴァールは独学で学び、習得し、その復興に取り組んだ。古楽器に取り組んでから最初のレコーディングまで10年かかったと聞く。今サヴァールの演奏を聴くと、音量が小さいというこの楽器への評価が、まるで気にならない大きく豊かな響きだ。
会場でアルテスの鈴木さんと久し振りに会う。
2017年9月16日土曜日