明治のお屋敷
明治のお屋敷
遠江の旧家を視察する機会を得た。明治期に財を注ぎ込んで普請し、その後継続的に改築・増築を繰り返した。昭和までは栄えていたが、今は生業の農業・林業も廃れ、高齢他住の家族だけでは維持が困難になっている。全国どこにでも起こりうるケースの典型とも見える。
今見ると不思議にも思えるが、周囲には山河がもたらす豊かな自然があるにも拘らず、この屋敷は敷地周囲に塀を立て、座敷から見える部分に人工的な作庭を施し、小さな世界を囲い込んでいる。借景と言う概念は感じられない。一旦決めた敷地境界の内側に増築を繰り返しているうちに、過剰な密度の建築群が塀の内側に残った。庭の手入れも侭ならぬ状態になると、野性植物が少ない空隙部分を埋めていく。またレヴィ=ストロースの声、『悲しき熱帯』のあのフレーズが聞こえる。
各駅停車のこだまと、単線一輛編成の天竜浜名湖線を乗継ぎ、天気にも恵まれ、景色を堪能した。地元唯一の食堂で食べたカレーの米は記憶に残る旨さ。同行のNと久し振りにゆっくり話すことが出来たのも収穫。良い一日だった。
2017年4月15日土曜日