東京・春・音楽祭

 


指揮:リチャード・エガー

管弦楽:紀尾井シンフォニエッタ

ソプラノ:阿部早希子

カウンターテナー:藤木大地

@石橋メモリアルホール


マンゼの共演者としてのエガーは、録音、生の演奏どちらも聴いたことがあり、ヴァイオリンと対等以上の表現力に揺さぶられた。そのエガーが紀尾井シンフォニエッタを指揮するというので期待していたが、演奏は期待をはるかに上回った。


片山杜秀だったらこの演奏どう評するだろうか?などと考えながらエガーの指揮振りするパーセルを聴いていたら、冷麺を食べている感じに近いかな、と思った。金属弦を鳥の羽で弾くチェンバロと、羊の腸を撚って作ったガット弦を爪弾くリュートを通奏低音とし、ビブラートの抑制されたモダン楽器のオーケストラを上に乗せる。チェンバロのシャリシャリした感じは、氷を入れずシャーベット状に牛スープを凍らせた冷麺のスープに通じ、ストレートで余計な縮れのない弾性のある麺がその中に泳ぐ。ソウルで食べた極上冷麺そのままだ。そうだそうだ、この感じ、美味い冷麺だ。しかもサクランボみたいな余計なトッピングは一切無い、素朴な仕上がりの冷麺。


阿部早希子のソプラノは、フォルテから消え入るような小さい声までよくコントロールされ、充実して聴き応えがある。パーセルの数曲を聴いた時には英語の歌を聴くのが久し振りだったこともあり、普段聞き慣れているドイツ語からスイッチを切り替えるのに手間取ったけれど、ヘンデルのイタリア語のアリア『私を泣かせてください』ではこちらが泣いてしまった。今朝伝えられたザハ・ハディドの急死を連想したのかもしれない。


冷麺のことを考えていたら腹が減った。帰りに上野の居酒屋で雨宿り。ザハを偲んで。

 

2016年4月2日土曜日

 
 

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