ときの忘れもの・拾遺 第4回

 


素晴らしい演奏の後で、コンサートのにわかプロデューサーが自分で楽器を持ってノコノコ登場しヘッポコな演奏を披露する、という悪夢のような事態が自分の身に起きた。


前日の合わせで暖かい励ましの言葉をいただいたものの、自分の実力は自分が知っている。こういう時は、マジヤバい、とでも言うのであろうかなどと考えながらコンサート当日「ときの忘れもの」の木扉を開けると、既にウォーミングアップを始めていたチェリスト富田さんの横で、開演時間前に早めに到着した客が椅子に腰掛けその練習をガン見している。忘れようとしても忘れられない御尊顔は石山修武その人であった。悪夢の中で覚めない悪夢を見ているようだ。


ギャラリーオーナー綿貫さんへのサプライズ・クリスマスプレゼントとして、アンコールにバッハのクリスマスオラトリオからアリア<Bereite Dich, Zion>を木田いずみさんが歌う計画。Vn.のオブリガートとVc.の通奏低音がお伴。第1回目のコンサートを出張で欠席してしまった後ろめたさもあり演奏を承諾していたのだが、嗚呼こんなことになろうとは。


「最近磯崎さんどう?」みたいな話で開演前の雑談。(中略)演奏中、石山さんは小さいノートにチェロを弾く富田さんをスケッチしていた。いずれ見てみたい。(中略)終演後、石山さんと雑談の続き。なつかしくもある喧嘩腰の会話は名人芸の域に達している。(中略 )「これ以上話してると喧嘩になるから帰るよ」と石山さんが帰ってから綿貫さん、富田さんらと会食。

 

2016年12月22日木曜日

 
 

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