シリア

 


狭い我が家は本の背表紙が壁の仕上になっている。大多数の日本の本は背表紙デザインがおざなりで、本の連なる壁そのものがたいした景色に見えないのが残念なところだが、その中でもひときわ情けないデザイン、しかしよく目立つ青のペーパーバック展覧会カタログがこのところ気になってしょうがない。


『古代シリア文明展』(1988年)今は亡き西武美術館で開催され全国を巡回した展覧会のカタログだ。「海のシルクロード」という犬HKの番組に合わせた企画だった。主催は犬。


カタログを開いてみる。垂涎のお宝満載だが、見た筈のほとんどの展示品は忘却の彼方。円筒印章を辛うじて思い出す。側面に凹凸のついている円筒形を柔らかい粘土の上で押し付けながら回転させ凹凸面を粘土上に複写する仕組みの印章。出土された印章そのものと、展示のために粘土上にかつての印影を再現したものを同時に展示していたのが記憶に引っかかっていたのかもしれない。モノを見るだけでなく、そのモノが関連するアクションを同時に展示すると印象に残るということか。


展示品は、アレッポやダマスカスの博物館から拝借してきたもの。発掘場所はシリア北部。今やあの連中の支配地域となったエリアだ。この度は発掘場所パルミラも破壊し尽くされたという。


パルミラに行くためにこの展覧会で予習したようなものだったのに。まだ行ってないのに。

 

2015年9月9日水曜日

 
 

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