ダンテ
ダンテ
空港では誰しも初めから怪しい目で見られることを宿命づけられている。大概気分の悪いところである。この度ゲートの手荷物チェックで、ボクの後ろに並んでいたと思われる女性が、かつて聞いたことも無いような大音声でマシンガンの如く怒鳴り散らしている。半径500m以内の人々は、皆凍りついている。気分の悪いところに、不用意に油を注いでしまったのだろう。
振り向くと石になりそうなので、前を向いたまま声の特徴からどんな人なのか想像してみた。ひとしきりの大騒ぎの後、実際にそのお顔を拝見すると想像と寸分変わらぬお顔立ち。それはヴェローナのシニョーリ広場に立つダンテ・アリギエーリその人だった。黒ずくめで髪も覆っているけれど、お顔は出している。女性だと思ったが、声の高い男性だったのか。いや、ダンテは女性だったのかもしれない。
それにしても長生きだ。今年750歳の筈。
2015年6月13日土曜日