神々のたそがれ

 


凄いものを見てしまった。臭気、汚辱、嘔吐、殺戮、、ネガティブな要素のみを磨き上げてグロテスクな美の極北を創りあげている。


「地球より800年ほど進化が遅れている別の惑星に、学者30人が派遣された。その惑星はルネッサンス初期を思わせたが、何かが起こることを怖れるかのように反動化が進んでいた。」


一応物語の筋はあるのだが、そんなことはどうでも良い。ボスやウィトキンの作品の中に自分が紛れ込んでしまったかのような不安の中で3時間、瞬きした事を思い出せない程の緊張を強いられた。映画が芸術の一形式としての有効性=感情に直接働きかけるエネルギーをいまだ豊かに保持している事を見せつけられ、うれしいやら恐ろしいやら。


この映画は、監督アレクセイ・ユーリエヴィッチ・ゲルマン(1938-2013)が死の直前まで13年間に渡り制作を続けていた。脚本初稿が出来たのが1968年。プラハの春〜チェコ事件の影響で延び延びになって撮影に漸く着手したのは2000年。こうなると13年が長いのか短いのかよく分からないが、映画の完成度に対する自身の希求が死を招いたように思える。


もう当分見たくないほどに素晴らしい。

 

2015年5月3日日曜日

 
 

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