砂漠の驟雨

 


アレキサンドリア。起床しても暗い。間違えて早起きしてしまったのではなく、黒い雨雲が原因だった。しばらくすると稲妻が走り雷鳴が轟く。驟雨。突然の予期せぬ事態に芝生のスプリンクラーは出っぱなしだ。


朝食時にホテルの人に訊いてみたところ、冬はともかくこの時期の雨はとても珍しいとのこと。雨は2時間程度であがった。外出して車で移動中に道の様子など観察してみたが、ところどころ水たまりがあるのみ。文字通り渇いた砂漠に水が染み込んだようだ。砂漠ど真ん中の計画地には、雨の痕跡も無い。よく見ると砂の表面に若干の雨垂れ跡がついているだけだ。


「エジプトはナイルの賜物」と言ったのはギリシャの高田純次=適当男・ヘロドトスだったかな。ナイルが上流地域の雨期によって規則正しく年に一回氾濫し、運ばれてくる肥沃な土がエジプトの偉大な文明をつくった、と言う程の意味だろうが、その賜物はナイル河流域=河岸の細いエリアと、ナイルが地中海に注ぐデルタ地帯に厳しく限定されていて、肥沃な土地と砂漠は鋭く峻別されている。緑の大地は、徐々にグラデーションを描きながら砂漠に変容するのではなく、あるところで線を引かれたようにいきなり砂漠になる。


E-JUST(Egypt-Japan University of Science & Technology/エジプト日本科学技術大学)の計画地は、アレキサンドリアにあるとはいえ、緑豊かな地中海に面するデルタ地帯にではなく、デルタの西端、鋭く線を引かれた砂漠側、ナイルの賜物の恩恵とは無縁の場所である。

 

2015年5月28日木曜日

 
 

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