HAUS-HYAZINTH

 


早逝の建築家/詩人、立原道造(1914-1939)が残したスケッチを元に建てられた「ヒヤシンスハウス」(2004)@浦和・別所沼公園


木造平屋の小屋。東西20尺/南北10尺の長方形平面。東西長手方向に西側が低い片流れの屋根が載り、外壁は縦羽目板張り、窓から上は屋根面も含め灰緑色の波板トタンで仕上げられている。片流れ屋根の水上部には、鳩が行儀よく一列に並んでお出迎え。直線の扱いはロシア構成主義的な影響を受けているようにも感じる。


南面中央の玄関を入ると、南東コーナーに大きく開いた窓。この窓が良く出来ている。ガラス障子が一本溝で外壁側に納まるようになっていて、コーナー部を全開することが出来、同じサイズで吊り戸車による軽い動きの雨戸もセットで設けられている。雨戸の中央には十字架型の小さい穴。これもロシア方面の匂いか。北側壁面には横長の窓と造り付けのカウンター、西側の突き当たり最奥部には小さく開けられた窓とベッド。この部分は昼も日照がコントロールされていて、本気の昼寝も出来そうだ。室内の天井は水平。


小さな建築は、ディテール処理、材料の選択、空間構成の作法、どれをとっても逃げ場が無い。設計の巧拙が曝け出されるのだろうが、立原はそれと感じさせずに軽々とそれらの課題を飛び越え、可愛い佇まいに結実させている。


この小屋は、もともと別所沼の畔に計画されていた。1930年代には、周囲に余計な建物も無く、窓からの景色はいかばかりだったろう。建築と一体で計画された小屋脇に立つ籏竿との面白い対比を見せるメタセコイアの並木は、その頃あったのだろうか。公園の中にポツンとある佇まいが愛らしく、鳩と一緒に連れて帰りたくなる。置く場所は無いけど。

 

2015年3月2日月曜日

 
 

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