Shk Saud

 


最近は新聞を読む時死亡欄から見てしまうが、この人の死は日本の新聞社では掲載されない。電話で知った。


カタールの王子、シェイク・サウド (Sheikh Saud bin Muhammad bin Ali bin Abdullah bin Jassim bin Muhammed Al Thani ) が死んだ。48歳。突然死、ということしか分からない。正式な本名がこんなに長いことも今回初めて知った。一般的な死亡記事が描く彼は、「アートコレクター史上、最高に金を使った個人」ということに尽きる。


1999年から足掛け7年に渡って磯崎さんが設計していたシェイク・サウドの自邸=ミレニアムハウスに、担当者として関わった。


初めて会った時のシェイク・サウドは30代前半、既にコイン・写真・自転車・家具・絶滅危惧の希少動物、などのジャンルについてすぐれた眼をもち、熱意を持ってコレクションを築いていた。その時彼はカタールの文化大臣だったが、そのコレクションは単なる個人コレクションなのか、国のものなのか、そこに注ぎ込んだのは個人の財布からなのか、あるいは国の公金だったのか、などの疑惑で2005年に失脚し、自邸=ミレニアムハウスの計画も中断した。周囲の妬みもあっただろう。


ミレニアムハウスは、磯崎新が建築全体を計画し、各部屋内部のインテリアは世界屈指のアーティスト/デザイナーに依頼するという企画だった。例えばデイヴィッド・ホックニー、アニシュ・カプーア、アンゼルム・キーファー、アントニ・タピエス、チリーダ、ソル・ルウィット、リチャード・セラ、サイ・トンブリ、ジェフ・クーンズ、ブリジット・ライリー、リチャード・ロング、アキッレ・カスティリオーニ、アントニオ・チッテリオ、エットーレ・ソットサス、ゲーリー・チャン、ジョン・ポーソン、マーク・ニューソン、ロン・アラッド、トム・ディクソン、ヴィコ・マジストレッティ・・・つまり、20世紀絶滅危惧種全員集合=ミレニアムハウスである。この仕事に関わった多くの巨匠たちは既に鬼籍に入っている。


シェイク・サウドは、絶滅が危惧されるあらゆる文化的なものを保護しようとするコレクターの理想像をオイルマネーを背景に体現しようとし、結果的には金の問題によってそれができなかった。


空の空、空の空、いっさいは空である。

(伝道の書1:2)

 

2014年11月10日月曜日

 
 

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