大いなる沈黙へ
大いなる沈黙へ
アルプス山中にあるカルトジオ会の男子修道院に入り、映画監督が一人でカメラを携え6ヶ月一緒に生活した、その日常の記録。余計な演出もセリフも演技も無い。撮影用の照明も無く、礼拝の聖歌以外の音楽も無い。先日、写真家の風間さんにこの映画をまだ見ていないことを白状したら、軽蔑と哀れみが綯い交ぜになった眼差しを向けられ、焦って見に行った。
予想通り、上映直後から熟睡している紳士淑女がいる。ボクにも意識不明の大波が襲ってきたが、2〜3度それを気合いでやり過ごしたら、あとは引き込まれた。
この映画の中にBGM的映画音楽は無いが「音」はある。大いなる沈黙の中ではその音、それは火が燃える音であったり、風の音であったり、足音であったりだが、そういった生活環境音が気になる。加えて修道士が歌う聖歌。これこそ『沈黙と測り合えるほど』の音だ。満たされた気分で映画館を出ると、駅前商店街の雑踏に電車の走行音。家に帰ればテレビの中でマッドマックス/サンダードームのティナターナーが絶叫してる。何てこった。
家も財産も放り投げ、修道僧として死ぬまで祈りの生活を続ける。こういう世界が11世紀から途切れず守られている。地球は不思議で、かつ面白い。
2014年10月4日土曜日