科学博物館

 


久し振りに上野の科学博物館に行った。


小学生低学年の頃、母に連れられた初めての東京でここに来て見た「干し首」は強烈だった。拳大の黒っぽい塊から長い髪の毛のようなものが垂れている。似たようなものが2つ並んでいたような気がする。何だかわからずに顔をケースに近づけて見てみると、それは小さいけれどまぎれも無く人間の頭部だ。じぇじぇじぇじぇーっ!!


南米の首狩族が作っていたものらしい。頭蓋骨を抜いた頭部を煮ると小さく縮むので、拳大のサイズになっているとのこと。その時の衝撃が癖になって、学生時代何度も来ることになったけれど、改修工事後、新館オープン以降は足が遠ざかっていた。今回来てみると、以前の薄暗く不気味な気配は全く消え失せていて、明るいきれいな展示空間に生まれ変わっている。干し首も見つけられなかった。明るい空間に呪術は馴染まないのだろう。少し残念な気分だ。


今回のお目当ては「シアター360」直径12.8m(地球の100万分の1のサイズ)の球体内側が全面スクリーンになっていて、360度映し出される動画を、中空を横切るブリッジから見る趣向だ。2005年の愛知万博日本館で展示されていた施設を移設したものだと言う。映像ソース全5種類のうち2種類を選び、月替わりの上映プログラムが組まれている。今月は「恐竜の世界」と「人類の旅」それぞれ5分。立ったまま見るのだが、独特の浮遊感に包まれ、手摺を掴んでいないとフラフラして倒れそうになる。


ルドゥーやフジテレビ、都庁コンペ磯崎案など、球体を力尽くで意匠的に扱った建築は、構想/実作いくつもあるが、球体に相応しい機能を伴った建築になっているケースはそれほどあるわけではない。すぐに思い浮ぶのはローマのパンテオンぐらいか。そしてプラネタリウムや天文台。これらは半球だけど。


この「シアター360」は完全な球形と機能とが分かち難く連関している。そして建築的な可能性はまだ開拓されていない。

 

2013年7月4日木曜日

 
 

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