マシアス・ギリの失脚
マシアス・ギリの失脚
時間調整で入った古本屋。タイトルが気になって買った池澤夏樹の『マシアス・ギリの失脚』
文庫で600ページを超える長編小説は、電車やバスで移動中に読むだけだと結構時間がかかり、カバーを外して持ち歩いているうちにヘナヘナになって手に馴染んできた。ちょうど物語も大きな山場を迎えたところ、ページをめくると右上に書かれたページ番号406が、鉛筆で丸く囲まれている。以前この本を読んだ誰かも、ちょうどこのところがクライマックスだと思ったに違いない。その鉛筆の○以外は全く書き込みがないので、余計にその○の重みが際立つ。「幸い」を連呼し「山上の垂訓」を思わせる福音的記述箇所である。
タマにこういうことがあるから古本屋は楽しい。自分でも何かを仕掛けた本を書店の棚に戻したくなるな。
先日、ベルリンを街歩きしながら紹介する番組を見ていたら、道端に誰でも自由に本を借りたり置いていったりできる無料公共本棚、その名も「本の木」というのがあって市民に親しまれているという。理想的ではないか。
2013年7月19日金曜日