atプラス 18

 


設計案を寄せた「お墓プロジェクト」が『atプラス・18』(太田出版)で紹介された。今号から装丁が変わって、光沢のある表紙では、腕を組んだ柄谷行人がこっちを直視している。


以下、寄稿された高瀬幸途さんの文章から抜粋


「死者の棲家」の値段は、生きている人(特に高  齢者)の生活費に大きな影響を与えるものになっていて、まさに「浄土の沙汰も金次第」なのである。


葬儀やお墓についての通念が変化し、自分の納得できる形式・やり方を選ぶ人たちが確実に増えていて、多様なお墓の選択肢が必要になっている。


女性たちが「リアルな生活感覚」を通して、葬儀やお墓の価格に厳しい目を向けている事は先に触れたが、そのことと表裏のものとして、生死を問わず、自分や親しい人たちをこよなく大切にする、そのことにこだわりたいという思いがあることを忘れてはいけないだろう。


昨年、杉並区は神田川沿いある東京電力の運動場4.4ヘクタールを約60億円で購入した。区役所の計画では運動公園として利用する事になっている。しかし、あたりにはすでに運動場や公園が少なからずある。スポーツやダイエットでひたすら健康増進を求める生者の利害だけでなく、死者のいる場所を身近なものにする配慮が求められているのではないか。10年もしないうちに区民3人に一人が高齢者になる杉並区なのだから、死者の憩いの場所や、死者との交流の場があってもいいだろう。



同書の「柳田国男の現代性」という対談(柄谷行人×赤坂憲雄)では、「柳田のいう先祖信仰、固有信仰は、いわば、生者と死者の協同組合のようなものです。(柄谷)」とある。これらの内容に共感する部分があるという事は、死と埋葬が自分の現実的・具体的な問題として気になる年齢になったという事か。


カトリックの典礼暦では11月1日を「諸聖人の日」としていて、その影響でプロテスタント教会も11月に「逝去者記念礼拝」を守っている。死は終止符ではなく、永遠の命へ向かう新しい出発であるという信仰に支えられ、毎年この時期に死者と出会う機会をいただくのである。

 

2013年11月13日水曜日

 
 

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