井の頭公園

 


今週はもう井の頭公園を横切るのはやめておこうと思った翌日、つい出来心でまた横切ってしまいました。凄惨なブルーシートの色は昨日に倍して広がり、本格的な宴会準備を始めている人で賑わっている朝。車座になってる奴らをゴミもろともシートに包んで捨ててしまいたくなる、なんてことは言いません。


地べたに寝転がる輩の脇で、スケッチブックを抱え、背筋を伸ばして花を写生する人が数人いる。


ちょうど寺田寅彦の随筆、東京を巡りながら写生をする日記のようなものを読んでいたところである。大正期の東京はどこに行っても「絵になる」景色に溢れていたのだろう。小高い丘に登ると土地の描く起伏が遠方まで広がり、草葺きの屋根が低く連続する風景である。


だが、寺田自身は「こうしてわが大東京はだらしなく無設計に横に広がって、美しい武蔵野をどこまでもと蚕食していくのである」と嘆いていた。だらしなく無設計に広がった武蔵野の真ん中で、建築家はスケッチブックに何を描こうか。


今週はもう井の頭公園を横切るのはやめておこう。

 

2012年4月5日木曜日

 
 

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