有朋自遠方来
有朋自遠方来
アフリカに23年間住み続け、現地で自然環境保全の仕事に携わっている畏友・西原智昭が一時帰国している。国連大学で行われた彼のセミナーに参加した。
セミナーでは西アフリカ赤道直下のガボン(シュヴァイツァーの行った場所だ)を例に挙げ急激な自然環境破壊の現状を教えられる。ツナ、サメ、タイマイ、イルカが中国船の違法な漁によって大量に失なわれている。冷凍され運ばれる目的地は中国だけではなく当然日本も含まれる。象牙を目当てにする密猟で、丸耳象は年間5000頭減少し続けている。象牙の密輸入国はもちろん中国、日本である。ガボンの大統領は、国内に13カ所、国土面積の11%に及ぶ国立公園をつくったまでは良かったが、中国の企業と契約を結び、国立公園内での石油採掘を可能にしてしまった。アフリカの熱帯林で生物を含む全体としての生態系が残されているのは、ガボン国内と、コンゴ共和国北部のほんの一部にしかないらしい。アフリカから熱帯林が消失する日も遠くないかもしれない。一度失われたものはもう取り返せない。
アフリカが持つ悲哀は全て先進国と呼ばれている国々によってもたらされる災厄である。日本も無関係ではない。日本人で長期間アフリカに滞在し続けて自然保護に取り組んでいるのは西原一人しかいない。個人の力がどんなに大きくとも限界はあるだろう。彼は今、跡継ぎを捜しながら、継続的に情報を発信することの重要性を訴えている。頭が下がる。
振り返り、環境破壊に対して建築に何が出来るかを考えると呆然としてしまう。呆然としている場合ではないのだが、呆然としてしまう。建築が宿命的に持つ環境破壊への影響を自覚した上で、少しでもそのインパクトを減らす実効的な工夫を今はじめることが喫緊の課題であることだけは確かだ。
2012年4月11日水曜日