ドム=イノ
ドム=イノ
鉄筋コンクリートの柱と床、階段やエレベーターシャフトなどの骨格だけを残して既存の壁や仕上げを取っ払い、建築を一旦丸裸の状態にしてからあらためて皮膜を再デザインすることがある。
ゼロから計画するよりも、化粧部分だけをやり直す方が経済的には有効である場合が多い。特に、今のような重苦しく行き詰まった経済状況をこじ開ける、あるいはやり過ごすためには、建築に余計なお金を使わないことも方策のひとつなのだろう。
今や建築の世界を覆い尽くしているのは、コルビュジエの予言・ドム=イノ(ドミノ)システムだ。コルビュジエ以降、建築設計とは三次元に無限に広がるドム=イノ仮想グリッドの一部を取り出し、そこに皮膜をかぶせて現実の建築に置き換えることになった。遍在する不可視のドム=イノは、皮膜の意匠設計に先在する。あらゆる経済効率を最高レベルに高めるには、ドム=イノ方式は有効だ。効率至上主義を宿命づけられたオフィスビルは、世界中でこのスタイルを採用することになる。
コルビュジエはこれを住宅に適用した。骨格は変わらない、皆同じものを使っているのに、化粧の巧拙で建物の評価に差が出る。罠を仕掛けたコルビュジエの遠い笑い声が聞こえる。
2011年10月6日木曜日