ハーメルン

 


坪川拓史監督の「ハーメルン」。彼が「設計図」と呼んでいたシナリオが撮影中/公開前にも関わらずボクの手元に来た。映画の主人公が耐震診断士なので、建築に関わるボクが主人公の言動をチェックさせていただく大役を仰せつかったのだ。天才・井桁裕子の人形が登場することもあって、この映画にはただならぬ関心がある。


映画に対面するその時までになにか下拵えをしておこうと思い、阿部勤也の「ハーメルンの笛吹き男」を読んでみたりする。気分はすっかりハーメルンだ。


グリムなどにも登場する13世紀起源の話。一人の男が、ハーメルンの街に大量発生したネズミを笛の音にあわせておびき出し、ネズミといっしょに川に入ってネズミは全滅めでたしめでたし。


ところが、日本で出版されている童話や絵本にはこの後のことが書かれていないことが多い。笛吹き男はあらかじめ市議会とネズミ退治の高額成功報酬の話をしていたにもかかわらず議会は支払いを拒否。怒った男は別の日に奇怪な服装で再登場。こんどは笛の音に合わせ、街の子供130人を引き連れそのまま街を出、全員失踪行方不明になってしまった、というお話。


坪川監督の映画では、現代日本の、子供がいなくなった過疎の限界集落が登場する。


この映画が、現在も有効な中世的伝承の真実をどう抉ってくれるか、公開が待ち遠しい。

 

2010年9月20日月曜日

 
 

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