バラバラ
バラバラ
自然光がコントロールされた暗めの部屋には、バラバラになったボディーパーツがそこかしこに転がっている。乾くと少し縮むという。手にしてみると、まだ完全乾燥していないのだろう、水分を含む物体特有のしっとりとした肌触りを伴った重みが、掌にズッと載ってくる。
人形作家・井桁裕子のアトリエを訪問。凄まじい完成度の作品群を支える格闘の現場を目の当たりにして、畏怖にも似た感動を覚える。
日曜の新聞には、縄文初期、国内最古級と思しき土偶が滋賀県で発見されたとの記事。人形は人類の歴史とともに発生、人類の文化活動と並走し多方面に展開している。
人形制作は、創造者の視点を獲得しようとする行為であると同時に、自らの中にその不在を浮かび上がらせてしまう哀しみに包まれている。「宇宙を創造する時に神にはどんな選択の幅があったのか」という疑問を抱いたアインシュタイン同様、出口の見えない問いと答えの無限ループの中に閉じ込められているかのごとき、この世の始まりから続く、被造物の孤独な闘いだ。
神は御自分にかたどって人を創造された。
(創世記1:27)
2010年5月31日月曜日