F3
F3
写真など全然撮りそうもない友人が、押入の中に仕舞ったまま忘れてたんだろう。ようやく引越を機に発見し、使う気も無いから手放すことにしたその瞬間にボクが目の前にいた。もらっちゃった。ほとんど未使用。
ジウジアーロのF3は1980年の発売当時からカメラ好きのあこがれの的だったが、予算の問題が立ちふさがり、学生時代のボクは初めての一眼レフをCONTAXにした。それ以来F3はずっと一方的にライバルだった。デジカメの時代になって、ようやくNIKONのデジタル一眼を手にしてみたら、なんとつくりのいい加減なことか。NIKONはデジタルになって、違う会社になってしまっていた。おそらくF3で電子制御式シャッターを導入し、F4でAF機能を付けた時に地滑りは始まっていたに違いない。わがCONTAXは会社ごと消滅してしまう。
自動車も今や電子制御無しには1ミリも動かない機械になってしまったが、最近の車世界における地殻変動はカメラの辿った道と重なって見える。そういえば、ジウジアーロはそもそも車のデザイナーだ。
ずしりと重く硬いボディーを手にし、かつてのCONTAX派はちょっと寂しいけど少し嬉しい複雑な心境。でも、ぼやぼやしてるとフィルムも印画紙もラボも絶滅寸前だ。
先日見た杉本博司の展覧会は、写真の歴史そのものに引導を渡そうとする周到な計画だった。栄光のF3を持って、滅び行く銀塩としばらく並走しようか。
2010年3月4日木曜日