気仙沼
気仙沼
はじめての気仙沼。造船技術を建築に活かして御活躍の高橋工業・高橋和志社長を訪ねる。
今回の旅は、仙台に住むワセオケ時代の先輩ヴィオラ奏者山口さんと同行させていただく。山口さんは現在新日鉄にお勤めで、高橋社長とは仕事のおつきあいがあり、ボクもカタールの仕事の時に高橋社長には大変お世話になった。互いが知人同士であることが分かり、三角形がつながった記念に気仙沼で会うことにしたのだ。仙台で山口さんと合流、車を借り気仙沼に向かう。
国宝・大崎八幡、円通寺庭園、松島などを見ながらすすむと、雪が降りはじめ、東北気分が盛り上がる。山口さんとの車中の会話は、卒業以来四半世紀の時間を埋めていく。
造船一族7代目、高橋社長は”気”に満ちあふれた好漢。建築の技術領域では手に負えない設計を、確かな造船の技術で次々と実現して来た。工場では妹島さんの新しい仕事を組み立てている真っ最中で、アルミの曲厚板による屋根のパーツを上向き溶接して一体化している。水と火を同時に使って鉄を曲げる技を実演していただいたり、原寸場での作業を見学させていただいたり、見所満載の充実した一日となった。ありがとうございます。
造船の設計、施工に要求されるのは、水と風、喫水線の変化に対応する精緻な流体力学。加えて無限の安全性。さらに設計と施工の誤差は0であることが前提。分かり易く残酷なまでに生と死が隣り合っている現場だから、限界の設計、施工が求められるのだ。
建築も本来生死が隣り合う境界線にある。造船から学ぶことは果てしなく多い。
わたしは命と死および祝福とのろいをあなたの前に置いた。あなたは命を選ばなければならない。そうすればあなたとあなたの子孫は生きながらえることができるであろう。(申命記30:19)
2010年3月30日火曜日