シンメトリー
シンメトリー
土曜に引き続き左右問題について。
相称性についての加藤周一の指摘(「日本文化における時間と空間」など)の概略。「類型化すれば、西洋の美は相称性にこだわり、日本美術は左右非相称を強調する。(さらに言うと中国は徹底した相称性文化の国。)そして非相称性の美学が洗練の極みに達するのが茶室の内外空間。部分を積み重ねて全体に至る『建て増し主義』の成果とも言える。部分から全体への建て増しが偶然左右相称に行き着くことはあり得ない。部分は全体に優先し、細部はそれ自身の形態と機能を主張する、、、」
我々の美意識には、西洋の場合と鮮やかに対照的な、非相称性と水平方向の動きがある。
茶の点前は本勝手、逆勝手という言い方があることからも分かるように、左右非相称の作法を磨き上げて来た。庭を含めた茶室の空間においても、意識的に左右の非相称性を強調することによって空間のダイナミズムを獲得している。それを支配するのは水平方向の動きだ。
エジプト以来、西洋では相称性にこだわる建築設計が続けられて来た。空間は左右対称軸に沿って垂直方向にベクトルを持つと同時に、水平方向には硬直し、左右の動きに対する抵抗を示す。
物質を原子レベルに還元すると、美しい幾何学、極めてシンメトリカルな様相を示すことを我々は知っている。しかし人間的スケールの世界では、日照や風の動きによる樹木の歪みを美しいと感じ、個人の小さい庭の中にその自然を写し取ろうとする。鋏を入れて植物を整形する時も、自然の歪み、変形を再現しようとしてきた。幾何学的に刈込んだ鶴や亀の植込が滑稽に見えるのも、我々のDNA深部に、自然の非相称を愛でる部分が残っているからだろう。
2010年3月1日月曜日