白井晟一
白井晟一
韮山の江川邸つながりで、白井晟一の事。
建築を学びだした頃、佐世保に住む叔父が「会社の建物面白いから見に来たらどう?」と言ってくれたので、親和銀行本店に叔父を訪ねて遊びに行ってみた。それが白井晟一との最初の出会い。
家具や絵画のコレクションが、「この位置しかあり得ない」場所に丁寧に設置されているのが印象的だった。光を限界まで絞って光の存在をかえって際立たす薄暗い闇が全館を支配していて、体がこわばった。東京に帰ってから、彼についての諸々を調べはじめてみると、建築をはじめる前は、哲学を学んでいたとある。ヤスパースに師事していたらしい。
彼の書いたもの、作ったもの、を手当り次第に読んだり見たりしているうちに「白井病」の症状は重くなりつつあった。そんな時に見つけたのが「木造の詳細 3住宅設計編」(彰国社刊1969)
愕然とした。住宅ごときを作るのに、こんな高密度の図面を描かなきゃいけないんだ。
今でも、木造住宅の設計を始めるときは、この本を開いて自分を奮い立たせることにしている。
2009年7月14日火曜日