キンチョーの夏
キンチョーの夏
キンチョー蚊取り線香の香りは、鼻から入り大脳の嗅覚/記憶中枢を駆け抜け気分を一気に夏にしてくれる。
除虫成分の合成ピレスロイドに環境ホルモンの疑いがあるとか無いとか言われて、健康に命懸けの方々はキンチョー製品を使わなくなって久しいと思う。また、夏に閉め切ってエアコンで空調をするおうちなどでは、蚊取り線香の登場する機会も激減しているだろう。だが、どうもこれが無いと夏は物足りないのだ。
風流故に蚊が大量発生している百人町事務所にはブタの蚊遣りがよく似合う筈だ。探しに行った。大久保通りを歩いていると雑貨屋の店先でこっちを見ているうつろな瞳。すぐに出逢えました、理想的な蚊遣り豚。
この蚊遣り豚は、三重の四日市「萬古焼き」のものが圧倒的なシェアだという。家の中で裸火を安全に焚くには、それなりの材料を使わなくてはいけない。耐熱性に優れ土鍋で有名な萬古焼きが蚊遣りをつくっている理由のひとつだろう。
日本の住宅は伝統的に家の中で火を焚いてきた。土間のかまどはもちろん、座敷の囲炉裏を中心に家は構成され、燻された屋根裏は煙の防虫防腐効果で耐久性が向上する。茶室の炉も然り。現代、夏に物足りないのは蚊遣りの香りだけではなく、家の中を流れる空気そのものだという場合が多いのではないか。
百人町では蚊遣り豚がモクモクと煙を吐きはじめている。煙のたなびきは空気の流れを視覚的にも感じさせてくれる。
梅雨明けが待ち遠しい。
2010年7月15日木曜日