韓国にて 5
韓国にて 5
韓国にいる時にも、出来るだけ伝統的・古典的・歴史的なものを優先的に体験しようと心がけている。建築も音楽も食事も。
今回、ソウル中心部にある雲峴宮(ウニョングン)に建築見学のために行ってみると、ちょうど宮中音楽の演奏会が無料で楽しめるという企画の当日だった。雨は激しかったが、開演時間までしばらく待って聴くことにする。
雲峴宮内の老楽堂(ノラッタン)という建物の中庭を挟んで舞台と客席が対面し、中庭は気持ちのいい雨音で満たされている。日本の雅楽と起源は同じなのだろう。楽器の形状や音色は日本のものと極めて近い。呼吸や心拍数に音楽の速度が合っているのか、油断していると瞬時に深い瞑想状態に陥る。雨音と相俟って、ゆらぎ効果をたっぷり実感。
雲峴宮は、即位時(1863年)12歳だった李朝26代目の王、高宗(コジョン)が即位の翌年創建した邸宅。建築様式は中国からの伝統を引継いでいるが、日本近世のものより遥かに太い木割りで、建築に堂々とした原始の力が漲っている。
ここは朝鮮と日本の関係が混迷を深めて行く時代を継続して目撃してきた証人でもある。「李朝文化に流れている強靭な持続性への信仰の自信」(白井晟一)が、この場所で李朝の音楽を奏でさせる契機になっていると考えてもよかろう。
2010年6月16日水曜日