なぜか上海
なぜか上海
井上陽水は「蟹好き」らしい。「なぜか上海(1979年)」で彼が歌う「星が見事な夜」を探しに行った。
北京と上海を比べてみる。
中心軸が明快な都市計画に沿って発展した北京に対して、港湾の一点から自由に拡散した上海。/数千年もの歴史が堆積している北京に対して、アヘン戦争以降19世紀に歴史の舞台に登場した上海。/オリンピックの北京、万博の上海。/北京語、上海語。/北京はアヒル、上海ではカニ。
その日の上海は黄灰色に霞んでいて、街並の表層は素材や色を感じさせない、シルエットのみの影絵のような景色だ。目がチクチクする。汚染された空気の所為だろうか。上海から西に延びる新幹線の車窓からは、石炭を使った火力発電所のタワーが沿線の街ごとに何基も見える。京都議定書とは無縁のCO2大放出大会だ。
一見気持ちよく改装されたホテルの部屋は、有機溶剤の匂いが充満していて、外の空気が汚れていることは分かっていても、窓を閉めることも出来ない。
「星が見事な夜」は見つからなかったが、それでも上海蟹は美味かった。どんな水で育ったのだろうか。
2010年10月19日火曜日